水前寺エリア
2022年03月15日
肥後六花

熊本は古くから園芸が盛んな地で、歴代藩主が保護奨励し、さまざまな名花が生まれました。後の時代にその代表的なものを「肥後六花」とし、栽培法や観賞法には厳格な作法があります。

肥後六花に共通する特徴は、花芯の見事さ、一重一文字咲きで均斉の取れた花形、濁りのない花色の美しさです。園内には、肥後つばき、肥後しゃくやく、肥後花しょうぶ、肥後さざんかが植えられ、それぞれの季節に楽しむことができます。また、肥後あさがおは7月上旬、肥後ぎくは11月下旬に、毎年特別展示されています。

【肥後つばき(2~4月)】
起源は定かではありませんが、江戸末期の熊本藩関連の文献には約30種が記されています。独特の盆栽仕立てで、やぶつばきの根に接ぎ木して、枝ぶりを整えて鑑賞します。
花は一重の平開きで、雄しべは梅の花のように全方向にまんべんなく広がり、それが大きいものほど優れているとされます。熊本市の「市の花」です。

【肥後しゃくやく(5月上旬)】
遅くとも室町時代には栽培されていたようで、8代重賢公の野草園「藩滋園」にも植えられ、藩士たちによって改良、保存されてきました。
花は一重の大輪で、中心に鮮やかな黄色の雄しべが大きく盛り上がり、花形は整然としています。観賞法では、高さや色の配列などのさまざまな花壇づくりの決まりごとがあります。

【肥後花しょうぶ(6月上旬)】
江戸末期に12代斉護公の家臣が江戸の栽培の名人に入門を許されて、熊本に取り入れたのが起源です。花全体が大きく広がり、花芯も大きく立っています。
一般には地植えで観賞しますが、愛好家の「満月会」では鉢植えを伝統として、室内に配置して観賞します。

【肥後あさがお(7月上旬)】
あさがおは熱帯アジア原産で、奈良時代に中国より入り、江戸時代に花色の変わった品種などが観賞用となり、熊本でも熱心に愛好されました。
4月20日と7月20日に種をまき、夏と秋の2回観賞します。小鉢に本蔓一本作りで、草丈は鉢の高さの3倍にとどめ、第一花を草丈の4分の1の位置に咲かせます。花色は濁らず光沢に優れています。

【肥後ぎく(11月下旬)】
重賢公が文化政策の一端として栽培を奨励したことに始まります。藩士らによって独特な花壇式の栽培法が確立され、武家子弟の精神教育の礎となりました。
花形は一重咲きで平開き、中心部の筒状花は小さく、周囲の花弁は車の軸のように放射状に付いています。配列や花の位置、展示方法などにさまざまな決まりごとがあります。

【肥後さざんか(11~12月)】
日本古来のつばき科の花木です。重賢公が宝暦6年(1756)に薬草として栽培させ、花の美しさから次第に観賞用となりました。明治になって銘花「山埼大錦」が作り出されると、さまざまな品種が生まれました。
一重大輪で梅芯咲き(花芯が全方向に広がっている)が特徴ですが、八重もあります。